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27.9.26

USOGUI/真鍋匠

私は少しでも勝つ気があったのだろうか?
真鍋匠に勝ちたいと思っていただろうかと自問する。
勝つことで手に入る予定だった意地とプライドを練り固めたトロフィーは私が望んだものではない。真鍋が勝手に用意した勘違いの産物だ。
目を伏せ、顧みた結果を胃の腑に送り込む。
無数の目が、手が、頭の中に降り注いでくる。
勝ちたいわけがないではないか。勝ったら真鍋は今後一切口答えしないし、賭郎勝負の場でしか口を利かないと約束した。真鍋は私が彼を嫌っていると思っているからだが何もかもが間違っている。初めから間違っている。
私は最初からちゃんと理解していた。真鍋匠が私という人間をどんな目で見ていたのか。
憧憬、羨望、崇拝、中心に渦巻く下心。
暴くまでもなく、隠されることなく、目につくところに堂々と晒されていたので何かの罠かと思ったが真鍋は本当にただ私に好意を抱いているというだけだった。
彼はプロトポロスで唯一無二の特別な賭けに立ち会っているのに不思議でならなかった。
私は一介の会員だ。ただのギャンブル好き。気づいたら賭郎勝負に巻き込まれていて、なんとなく楽しそうかもというだけの理由で会員権を奪うような、人間としての出来もよろしくない女だった。 
金の多寡で測るなら私の人生は成功していると言えるが、金などいつ消えるとも知れない儚いものに然程の価値はない。金と引き換えに失った数々のものを振り返り目を凝らすとき、私は落伍者だと思う。

「それで、真鍋立会人は私に何をさせたいの?」
「賭郎勝負を受けてください。あなたの会社を賭けて」
「そんなこと?」
「私の望みはあなたの勝負に立ち会うことです」
「ふーん。私はてっきり⋯⋯」

夜行立会人が淹れてくれたコーヒーで続く言葉を飲み込む。
もっとプライベートなことを望まれるのではないかと予想していた。
いや、そうなることを期待していた。
現実的に考えたら、真鍋匠が私自身を望む可能性などないに等しいのに。
会社だろうが証券だろうが、命以外なら、賭けて失うことに恐れはない。頼まれなくても賭郎勝負はしただろう。
むしろ賭けるものが会社なら、喜んで勝負する。今の私にとって会社は足枷でしかない。これまで何度か賭けてきたものの手放さなかったのは対戦相手が気に入らなかったからだ。
真鍋は会社を賭けさせれば私が真剣に取り組むと思っていたのかも知れないが、大事なのは賭けるものではなく勝負の危険性である。もし勝負に負けることで会社だけでなく命まで危険に晒されるなら私は負けられない。でもそうでないなら……。
勝てば、真鍋はずっと側にいてくれたけれど、それはやはり私の人生ではない。

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