火が爆ぜる、ぱちりぱちりという音が頭の中に侵入してきては、私をどこか見知らぬ場所へと連れて行くように非日常感を植えつけてゆく。実際、真鍋匠に連れてこられたこの場所がどこなのか私にはわからない。助手席のシートベルトを締めたところでどこに行きたいか訊ねられ、バーベキューができるところと答えてからはずっと目を瞑っていた。真鍋は途中で一度車を停めて買い物をしていたが、その間も私が目を開けることはなかった。
串に刺したマシュマロを回転させながら隣に立つ真鍋の様子を窺う。
「楽しめていなさそうですね」
「どうやって楽しむべきでしょう」
「そんなの決まっているじゃありませんか。焼いて食べる。それだけです」
真鍋、あんたはクビ。
私がそう言ったとき、真鍋は本気にしなかった。そんなことはできないとたかを括っていたのだ。彼には私が気に入らなかったものがなんなのかわからなかったのである。
立会人という立場では見えなかったのかも知れないと思う反面、見ないようにしていたのではあるまいかと疑ってしまう。真鍋匠ほどの男が私の考えていることがわからないなんて、もしも真実なら私にとり不都合すぎるだろう。
「私は初めてあなたの勝負に立ち会ったとき、この先ずっとあなたの勝負に立ち会える幸運に胸が震えました。あなたのためにできる限りのことはしてきたつもりです。私を必要として欲しかったからです」
きれいに焼けたマシュマロに息を吹きかけて冷ます。食べながらこれまでのことを振り返ってみる。
正直なところ会員権を失ったことは大きな損失だったと言わざるを得ない。真鍋が専属でなければ私はもっとたくさんの金を集められた筈だ。苦渋の決断だった。
私たちの相性はかなりよかったと思う。彼は限りなく私に尽くしてくれた。ありとあらゆる我儘を文句ひとつ言わず叶え、私も対価として彼の期待に応えることができていた。
「未だにわかりません」
「何がですか」
「あなたの本当の気持ちが」
本当の気持ち。
口のなかでつぶやいて、思わず笑ってしまった。
「私はちゃんと理解していましたよ。真鍋立会人が私をどんな目で見ていたか。私の気持ちはあなたが見ていたものの裏返しです」
「それは違いますね」
「どうして?」
「私とは違って、あなたは私に然程興味はなかった筈です」
「私は勝負師ですよ。もし真鍋さんがそう感じていたのなら、私が意図していたと考えるべきでは? 私は今正直に話している。信じるかは自由ですけどね」
どのみちこれが最後だ。
今日限りで終わりだ。
もう真鍋に付き合う義理はないし、彼もわかっただろう。私はもう賭郎勝負をしない。彼はもう私とはなんら関係のない人間になったのだ。
「私怨で置き去られるかもとは思わないのですか」
「思いますよ。当然じゃないですか。これまで散々こき使ってきましたし、真鍋さんに優しくしたことありませんから」
「置いていかれても構わないと思っている?」
「そうです。そうするべきではないですか?」
「そんなことはしません」
ふたりでコーラを飲みながら森のさざめきを聞いた。
真鍋は私をここに置いていくべきだ。そして私の記憶ごと捨てて行った方が良いと思う。
関係のなくなったつまらない女が手にはいることはないのだ。
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