共犯関係

29.7.26

FKMT/森田鉄雄

私が無愛想でわがまま放題なのは社交性が身に付いていないからではない。私は元来社交的な人間であり、おべんちゃらも得意だ。銀二と出会うまではあっちにへらへら愛想笑い、こっちにぺこぺこと頭を下げ生きてきた。それが楽だったし、今だってそんなふうに生きてゆく方が簡単だろうという考えは変わってもいない。
面倒くさくて、ときには苦痛を伴う生き方を選択しているのは銀二と共に過ごす時間を一秒も無駄にしないためだ。
もし本当に森田の言う通り、私が社交性皆無の人間なら森田との会話も成立していないだろうに。自分を特例か何かだと思っているのか、不思議なものである。
銀二と話す森田の横顔を眺めながら、確か同い年だったなと思った。同い年にしては少し落ち着きが足りないような気がする。何ひとつ満たされていない、余裕のない男の焦燥感が滲み出ている。
別に嫌いではないが、他のメンバーが皆年上で老獪であるため、見ていてなんとなく落ち着かない。巽にあれが若さかと言ったらお前も若さを取り戻せと言われた。余計なお世話だ。
巽の話を遮りマンションを出る。車に乗り込んでラジオをつけた。交通情報。東名ジャンクション三キロの渋滞。気が滅入る。
五分もしない内に森田が出てきて助手席に乗り込んできた。銀二の指示で今日は私と森田がペアで張り込みをしなければならない。
「今日はよろしく」とかすかに緊張した面持ちで森田が言う。
ギアを一速に入れ、クラッチに置いている足からゆっくり力を抜いた。車が滑るように動き出す。駐車場を出て加速。一般道は空いており、運転が下手だと言われている私でも走りやすかった。

「運転上手いな」
「聞いてたより、ってこと?」
「いや、普通に」
「銀二さんの車を運転させてもらえない人間が普通に上手いなんてあり得ない」

ラジオを切る。流れてきた最近流行りのアイドルソングが気に入らなかった。浮ついた感じが嫌だった。
どんどん暗くてじめじめした人間になってゆく気がする。元々そういう気質だったのかも知れないが、誤魔化すことができなくなってきた。銀二の前で自分を偽ることはできない。偽っても無駄だからだ。あの人はすべてを見透かす。
お前はどうだ?
内心で森田に問いかける。
今はまだ目覚めきっていないだけ、というような気もした。

「なあ、訊いてもいいか……?」

無視していると森田が煙草を点ける。無言で窓を開けた。

「銀さんとどういう関係なんだ?」
「訊いていいって言ってない」
「許可が欲しかったわけじゃない。答えたくないなら別にそれでいい」

これほどむかつく答えはないと思う。ならばそれほど知りたくはないのだ。大体そんなことは銀二に聞けばすぐに済むのに、わざわざ私に訊ねるなんて嫌がらせ以外の何ものでもなかった。

「そんなこと知ってどうするのかはわからないけど、あんたじゃ私に勝てないから。絶対」

信号待ちで窺った森田の顔は馬鹿みたいに呆けていた。俺とお前の勝負なのかとでも言いたげな顔。いや、そこまで思い至っていないかも知れない。この女は何を言っているんだ、と感じている。
脳みそを揺さぶってやろうと車を急発進させて窓を閉じた。考えたところで納得のいく答えはでないだろう。なぜなら私も同じ疑問を抱えている。
私は銀二のなんなのか。
何と戦っているのか。
銀二の邪魔をする奴はみんな蹴散らす。銀二の求めを全うする。
私が望んでやっていることだから誰に文句を言うこともできないのだが、思うのだ。
私って銀二のペットみたい。
森田にもそんなふうに言われたらきっと怒りでどうにかなってしまう。

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