道案内という行為は限りなく面倒くさいものだと思う。連れて行ってやるならまだマシだが、口で説明するのは億劫でたまらない。
しかしながらロドスは広いし慣れない間は道に迷うのも無理からぬことで、道を訊ねられるなんて日常茶飯事だ。昨日も、一昨日も、食堂へ向かう途中で声を掛けられた。だから道を変えたというのに今日も呼び止められて、思わずため息が出そうになった。
「ねえ、きみ。温室がどこにあるか知ってる? 知っていたら教えてほしいんだけど」
「からかっているんですか、エリジウム」
「あれ? 僕のことを知ってるの」
「入職者のデータ管理を行っているのは私です。オペレーターの登録済みプロファイルはすべて覚えています」
エリジウム。最近ロドスに加入したリーベリの男性。
おちゃらけた印象を受けたが、戦術立案能力も、戦闘力も申し分ない。そして特筆すべきは彼の特技だ。類稀な空間把握能力と記憶力、方向感覚。地図を渡せば彼が道を間違えることはないだろう。
温室の場所を知らないだなんてあり得ない。入職者にはロドス艦内の案内図が配布されている。どうして私に話し掛けたのか訊ねると、彼は照れ笑いを浮かべて「仲良くなるきっかけ作り」と言った。
「協調性が高いことは良いことですね。でも私と仲良くなるべきではありません」
「どうして?」
「そのうちわかりますよ。そうじゃなくとも……時間は有限です」
温室の方向を手で指し示すと、エリジウムはそちらに顔を向けた。私はまた何か言われる前に歩き出す。
いちいち立ち止まるからいけないのだ。冷たくて、嫌な奴だと思われてもいいじゃないか。自分をもっと大切にすべきだと、ケルシーも言っていた。
「……エリジウム。私と行くと少し遠回りになりますが、それでも良ければ目的地まで案内しますよ」
エリジウムはわかりやすく喜んだ。愛嬌がある。きっと多くの人に好かれるだろう。私と親睦を深めるよりよっぽど有意義な時間の使い方がある。さっさとそれを知らせてやるのが親切というものだ。
ホーム
/
ARKNIGHTS/エリジウム
/