狡い人

22.8.22

ARKNIGHTS/ソーンズ

最悪である。
いったい何をどう伝えたらこうなるのだ。
この場にいないエリジウムに対して内心で悪態をつき、忌々しく思う。

「手を離してもらえませんか」
「この辺りは人通りが多い。逸れたら面倒だ」

まるで、探す自分の身にもなれとでも言いたげなソーンズの眉がかすかにひそめられる。

「子どもじゃないし、もし逸れてもひとりで帰れるから」
「子どもじゃないのはよく知ってる」
「なら、おかしいでしょ。これは」

私はソーンズにがっちり握られた手を持ち上げた。指と指がしっかり絡まっており、さり気なく逃げることはできない。どうにか説得する他ないのだが、私はソーンズのことをあまりに知らな過ぎた。何度か食事を共にしたことがあるだけで、任地で一緒になるのもこれがたったの二度目だ。
繁華街の喧騒が小路の暗がりまで溢れてくる。時折感じる現地人の粘ついた視線には気がつかないふりをしてやり過ごした。

「この街のことをどのくらい知ってる?」
「えっ? 資料は読み込んだけど 」
「その程度では駄目だな、このままキャンプまで戻る」

何か、私の知らないことをソーンズは知っているようだった。彼は視線を逸し、反論の余地を取り上げる。
路地を縫うように歩くソーンズに既視感を覚えてエリジウムの名を出すと、彼は言った。エリジウムに感謝した方がいい、と。
わけがわからないまま頷いた私を見て、ソーンズは表情を緩め「嫌そうだな」と笑った。

NAME CHANGE

TEXT

QooQ