咲かない太陽

19.6.21

FE/ジョーカー

「ジョーカーも兄さまのところへ行ったら」つい口から零れた言葉からは、最近の不平不満が滲み出していた。
「お邪魔でしたか?」紅茶の入ったティーカップをテーブルにそっと置いて、ジョーカーが顔を覗き込んでくる。不機嫌な理由を訊いてほしいのに、ジョーカーはそうしない。ただ眉尻を下げ私の言葉を待っている。私のわがままに付き合って時間を浪費したくないのだ。彼が仕えるのはカムイ兄さまただひとり。私はおまけ。おまけを世話する理由は私が王家の血を継いでいるから、カムイ兄さまと兄妹だからだ。決して私個人を好いているからではない。
お茶請けとして出されたスコーンにベリーのジャムを塗りながら窓の外へ視線を投げると、ちょうど畑の手前辺りでフェリシアと談笑する兄を見つけた。双子なのに、まったくと言っていいほど似ていない私たち。
ちらりとジョーカーを見やる。もし私たちがそっくりだったなら、ジョーカーもさぞ嬉しかったに違いない。彼は私をカムイ兄さまの代わりだなんて思っていないと言うけれど、それは嘘だ。ジョーカーが私を通して兄さまを見ることくらい知っている。いくら否定しようともそんな視線に慣れてしまった私にはわかる。目は口ほどにものを言う。隠そうとも隠し切れない。特に、カムイ兄さまに対する思いが強ければ強いだけ、その感情が表に透けて見えてくる。
普段はさほど気にかからないが気分が落ち込んでいるときはさすがに居たたまれない気持ちになった。
「ジョーカーはカムイ兄さまのいちばんになれないよ」
なぜだかわかる? と訊ねるれば、ジョーカーは困惑顔を作り惚けてみせた。本当は、わかっているくせに。そう吐き捨ててやりたかったがぐっと堪えて笑顔の仮面を被る。

「カムイ兄さまには他にもたくさん大切な人がいるからね」
「そうですか」
「そうだよ」

雲ひとつない澄み渡った青い空を見上げ、窓から差し込む太陽の光に目を細める。
ジョーカーを傷つけてやろうなどと馬鹿なことを考えた私を嘲笑っているみたいだ。
私は、長いため息を吐いた。

「……酷いこと言ってごめんなさい」
「いいえ。ナマエさまは何も間違っていません。あなたの仰る通りだと思います」

二人の間に横たわった長い長い沈黙。
遠くの方で聞こえるカムイ兄さまの笑い声。
ここで泣いても、ジョーカーは許してくれないだろう。

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