透器

6.6.21

Sky/書庫の大精霊

あなたに会えなくなる。そう悟ったから私は泣き真似をして、あなたの関心を引こうとしたけれど、あなたのすることはいつもと変わりなかった。私を神殿から送り出す手の温度にも変化はなかった。
私に、興味はないのだろうか。そう考えることは傲慢なことなのだろうか。
暴風域を抜けた先で呆然と立ち尽くす。自身が転生していることに気づく必要なんてなかったのだ。無知でいる方が幸せだったに決まっている。どうして知恵がついたのか、わからない。
この先に進めば今の私は消える。見えなくなる。光になって、星になって、同じ私ではなくなる。
とても怖い。でも、大精霊さまはそれを望んでいるのである。それこそが星の子の使命だから。……いや、望んでいるというより当然の義務だと考えているのかも知れなかった。確かに私たちはそのために存在していると言っても過言ではないだろう。
私は一歩前へ踏み出した。ここで悩んでいても仕方がない。大精霊さまを失望させるようなことは絶対に避けねばならぬこと。幾千もの星の子の中で、役立たずは見向きもされなくなる。
それは嫌だ。何よりも苦しい。帰りたい。大精霊さまの膝元に。
私は転生したあとも懲りずに書庫へ通った。大精霊さまは変わらずの距離感で接してくる。だからこそ私のことを覚えていているのか、それすら訊ねることができなかった。覚えていないと言われたら当然悲しい。だが覚えていると言われても悲しい。私ばかりが好きで好きで、仕方がない。
今日もまた、暴風域へとつながる扉が無慈悲に開く。このまま二度と生まれ変わることがなければいいのに。

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