ミリアを壊すにはまず、ザトーが大きな障害だった。自分もアサシンに所属している手前、ボスの怒りに触れるような行いは慎むべきだと考えていたし、何よりザトーに邪魔されてミリアを壊せるわけがない。ミリアと一対一ならいざ知らず、ザトーに加勢されたら間違いなく私が殺される。
死ぬのはご免だ。ヴェノム相手に思いの丈を打ち明けると、彼は冷ややかに「狂っている」と言ったがそれは違う。
ミリアという存在にのぼせて前が見えなくなっていたのは遠い昔のことだ。殺したいほど憎いのに愛しくて堪らない。ミリアが好きで好きで仕方なかったあの頃。二律背反の想いに陶酔していたあの頃の私なら、狂ってたかも知れないが、それにしたって事実思いとどまっているのだから、私の理性は立派に務めを果たしていると言えるだろう。
私は勝算のない勝負はしない。身の程もきちんと弁えている。
「ザトーがいなくなった今がチャンスだと思うの。ヴェノムさえ邪魔しないでくれたら--」
「するに決まっているだろう」
「うん、まあね」
自分で淹れた紅茶を飲みながら私は笑う。もちろんヴェノムが許してくれるとは思っていなかった。話せば、最悪戦闘になるだろうと覚悟をしてアジトに踏み入れている。
「私のこと、殺してみる?」
「その必要はない。ミリアを追うつもりだったらナマエはとっくにそうしている筈だからな」
「ずいぶん自信があるみたいだね」
「ああ。わかっていないのはナマエの方だ」
ヴェノムは長い脚をゆっくり組み替え、膝頭に手を添えてかすかに上体を屈める。髪の隙間から覗く目が私の心を見透かすように瞬かれた。
そうだ。わかっていないなんてありえない。もちろん、 わかっているとも。私がミリアを追わない理由、そして今ヴェノム相手にくだらない冗談を言っている理由は明らかだ。ザトーが死んだからという以外に何がある。
「他人のものだから、ミリアがほしかったのかな?」
「……さぁな」
「あのさぁ、ヴェノム。ヴェノムって本当にいいやつだよね。なんだかんだ言っても私の話聞いてくれてありがと」
私がザトーやミリアに感じている劣情をヴェノムのような真面目な男はいったいどう解釈しているのだろう。呆れるばかりで怒られたことは一度としてない。いつも私が本気ではなかったからなのか、それとも……。
私は顔に触れた髪を耳にかけ、立ち上がる。
私自身が先ほど口にした「ヴェノムはいいやつ」。これが全てだと思おう。
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GUILTY GEAR/ヴェノム
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