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YU-GI-OH/遊城十代
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異性から二人きりになりたいと言われたら、動揺するとか戸惑うとか、もっとそういうこっちまでどぎまぎしてしまうような反応があってもいいと思う。十代にそれを求めても仕方ないといえば仕方ないが、少しがっかりしてしまった。私って、これっぽっちも恋愛対象として見られていないらしい。
「それで? なんだよ」背後で椅子を引く音が聞こえる。
私は辺りに人がいないことを確認して教室の扉を閉めた。振り返ると、十代は机の上に上半身を乗せて伸びていた。もしかしたらデュエルを期待していたのかも知れない。私の用件はデュエルよりずっとつまらないこと。相談とも呼べない、愚痴とも違う気がする、だけど他に話せる相手が思い浮かばない、心境的には大変面倒くさいものだ。
私は扉に背を預け、窓の外に視線を向ける。「私、なんか変なんだよね」
「あんま変わってないけどな」十代はいつもの調子で言った。
傍目にはそうだろうとも。食欲が落ちたわけでもないし、夜はよく眠れている。集中力が続かなかったり、めまいを感じたり、手が震えたりもしない。
「でもね、大徳寺先生がいなくなってから変みたい」
十代はこちらをちらりと見て短い相槌を打った。
「胸ん中がすーすーするって言うの? 違うかな、穴が開いてるような感じ?」
真っ暗な奈落を覗き込んでいるような、そんな気分になることが度々ある。
「ふーん」
私は視線を十代に移し、疑問をぶつけた。
大徳寺先生って生きてる? どうしてだか、先生が生きているとは思えなかった。そして、なぜだか、その理由を十代が知っているような気がしていた。
私は黙って十代の返事を待つ。
十代は決して目を逸らそうとしない。私も負けじと彼の目を見詰め返した。
どのくらいそうしていただろう。私たちの間に流れる時間だけがとまってしまったみたいに感じるほど、私と十代は見詰め合っていた。
「死んではないだろ」
十代の瞼がほんの少し降りていた。
興味がなさそうな口ぶりだったが、それは何かを隠しているかのようでもある。生きているとも死んでいるとも断言できない何かがあるのだろうか。さらに突っ込んで訊いてみたかったけれど、別に十代を困らせたいわけではなかったのでおとなしく次の質問をしてみた。
「じゃあ吹雪さんは?明日香のお兄さん。どう思う?」
「無事だと信じたいよな」
今度はすぐに返事があった。私も同意見だった。
「お前、やっぱり変だぜ」十代は上半身を起こして頬杖をつく。
「だから言ってるでしょ。変なんだって」
誰かがいなくなっても、私たちの日常は昨日と同じように流れていく。胸のざわめきも時間が押し流していく。記憶はどんどん薄れて、そのうち誰かがいなくなったことも思い出さなくなる。
私は自分がずいぶんと薄情な人間だと気づいてしまった。
もし、十代がいなくなっても、明日香が消えても、私は平然と授業を受け食事をし、夜は眠るだろう。そういう自分を発見してしまったのだ。
「十代。私、十代が突然いなくなっても探さないよ」
「ナマエの好きにしろよ」
そうする。私は閉ざしていたドアをスライドさせ廊下に出た。
肩越しに振り返った私は「わざわざ言うことないだろ」という表情を浮かべる十代の顔を見た。だって、言わないと卑怯な気がしたから。
「明日の放課後デュエルしようぜ。最近してなかっただろ」
「そういう気分じゃないけど……」
「サボってるからだな」
十代の笑った顔を見ていると考えすぎなのかも知れないという気がしてくる。
「わかった」私は笑い返して扉を閉めた。
だが、一向に足は動かなかった。教室の中に十代はいる。私は息を顰めてそれを確かめている。
絶対にいる。絶対。
私はそっと扉から手を離す。
十代が大徳寺先生や吹雪さんのようにどこかへ行ってしまうような気がするのはなぜだろう。
さっき言ったことは、たぶん間違いだ。“探さない”のではない。私じゃあ十代を見つけられる自信がないだけ。