久遠の外側

7.6.21

GUILTY GEAR/スレイヤー

夏が来て、秋が来て、冬が来る。
冬が来たら、春が来て、次の夏が来る。
季節が巡るのはあっという間だ。わたしは当たり前のように去年の今日よりひとつ歳を取り、また一歩人間の死に近づいた。死に対する実感は近いようで遠く、遠いようで近い。まだ自分の心臓が鼓動をやめたあとのことは考えられないけれど、密かに熱病と名づけた恋は、あまりにも呆気なく終わりを迎えようとしている。
二人が出会ったそのときすでに、彼には妻がいた。彼女はとても美しく、聡明で、わたしとは比べものにならないくらい長生きできる女性だ。間違いなく彼女はスレイヤーに必要なひとだと確信し、わたしは悋気の炎を燃やす間もなく納得してしまっていた。
一般的で比較的安全な方法でどうにかしたいと思ったらどうにもならないこと、というのは山ほどある。では違法行為に手を染め危険を犯せばどうにかなるのかといえばそうでもないから納得できないし、苦しいのだ。
たとえば種族の壁を越えようと思ったら生半可な努力ではどうにもならない。しかし越えた先に報いがあるのかどうか、それははっきり言ってわからないし、幸せになれるのかどうかはさらに不明確だ。奪ってでもほしいのか、そもそも奪えるのか。
それは美しいひとを殺すということだ。美しいひとを殺したわたしが愛を手にできるのかという問題だ。そして、わたしが人間の寿命を遥かに超え、この世に存在し続ける方法を見つけられない限り、始まりに立つことすら叶わない。
わたしはそんなことを何年も考え続けてきた。どうにかならないのかと、本当にどうしようもないのかと考えたが、結局はすべてを諦めることを選んだ。もし運命のひとが誰もに存在するならば、わたしの運命とはスレイヤーではない誰かのことだったのだと自分に言い聞かせて。
しかし、運命ではないからといってすぐさま気持ちを切り替えられるわけもなし。不毛な恋であることはわかっている。もはや恋と呼べる代物かどうかも怪しくなった感情にすがりつく意味などないけれど、それでも未だに彼のことが好きだった。スレイヤーのことが。
あなたのことが。

「こんな時間にどこへ?」

街の暗がりに彼を見つけても驚きはなかった。夜は彼らの時間だ。

「きみを探していた。この街にいると聞いてね」
「ソルからですか?ううん、誰でもいいけど。いったいなんの用で」
「いっしょに来てほしい。アサシンに向かう。理由は道すがら話そう」
「いやだと言ったらどうするつもりです」
「力尽くで連れていくしかあるまい」

わたしたちは数秒間睨みあいを続けた。
(戦う?スレイヤーと)
自問自答してみる。
勝つことに意味はない。勝ちたいから戦うのではない。過去のわたしはスレイヤーと深い繋がりがほしくて、挑んできた。わたしを記憶してほしくて。
スレイヤーはわたしの元に来た。だから、もういいんじゃないかと思う。もう戦わなければならない理由がない。
わたしは緊張を解き、からだの力を抜いて、風に煽られた前髪を直す。

「素直にお供しますよ」
「そう言ってもらえてよかった。ナマエと戦うのは苦手だ」
「どうしてですか」
「負ける気もなければ勝つ気もないだろう?」
「やる気なさそうに見えますか?」
「いいや。別の目的があるに違いない。でも私にはそれがなんなのかわからなくてね」

横に立ち並ぶスレイヤー。スレイヤーにエスコートされながら歩くのは気分が良い。下心が感じられないから、なのだろうか。丁寧で、優しくて、だから好きになったのに変なの。
よき理解者になってくれたらなんて望んだことはない。しかし、こうして私を知ってくれているのだと実感すると嬉しかった。
ついに死ぬのだな。
恋が死んでいく。
その過程を私自身が「わからない」と感じていたようにスレイヤーも「わからない」と応えてくれたことがせめてもの手向けになろう。

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